90歳の御大による小説

楽器が弾けるとか絵が描けるとかなにかのスポーツが得意だとか、そういうのは多くの人にとっては「できないこと」だから、できるだけでそれなりにインパクトがある。一方で「話す」「書く」というのは、だいたい誰でも一通りできる。だから余程の実力がないと評価されない。作家になるとかお笑い芸人をやるとか聞くと、そんなシンプルかつ、奥の深い世界に飛び込むなんて勇気があるなあと思う。

イザ!:【著者に聞きたい】作家、小島信夫-話題!ニュース

"一つの段落の中で話が首尾一貫しない文章が多く、いくつもの筋が同時並行的に現れる。同じ話題がページをおいて何度も繰り返される(著者はこれを「はやりの言葉でいえば“響きあう”」といった)。そして主語がわかりにくい(主部と述部が対応せず、それぞれが勝手に一人歩きをしているようだ)。脳科学者の茂木健一郎は本書を「尋常でない強度をもった、目に見えない軟体動物の生命のうごめき」と形容した。"

"驚くことに、昔から原稿をいったん渡したら、手を入れず、読み直しもしない、という。「読み直してこれはうまくいったと舌なめずりしているわけにはいかない。自分で面白いと思ったら堕落かもしれない。また新しくゼロから出発しなくちゃいけない」"

昭和30年に芥川賞ということは、文筆家として一線に立ちはじめて少なくとも50年は経ってるということだ。そのぐらい年季を重ねると、一回りするもんなんだろうか。どんな文章なんだろう……。ピカソも、もともとデッサンとかえらく巧いんだよな、とかふと思ったりした。