寺井×橋口インタビュー2

※はじめて読む方は寺井×橋口インタビュー1からご覧ください


既存の枠におもねらない
− 最大化する為には?
既存の枠に簡単におもねらない事かな。この「まち」にはこうしなきゃいけない、この場所ではこうしたらいけない、というようなことを僕は考えはするんだけれども、最終的にはそのようなことをそんなに気にせずにやろう、という趣旨で動いている。できるだけ自由にする、という事なんだけれども、それは自分のためじゃないっていう意識があるからできるんだという気がする。僕らは場所を作っているのであって、僕らが自由にやるんじゃなくて、僕らは表現者が自由にできるようにしてあげないといけない訳だから。


− 「まち」の人とはどのようにコミュニケーションとっていますか?
僕らは道の真ん中でやっているから、声かけてくる人間はいるし、僕らは声をかけてき易い機会にしているつもりだから、コミュニケーションはそれなりにに取れていると思う。


特定の事をやってコミュニケーションをとるというのは綺麗だけれども、例えば三〇人の人を集めてワークショップをするとしたら三〇人だけじゃないですか。先にワークショップありきじゃないだろうとは思うんですよ。「まち」中でやるということは、それだけでそれなりにはコミュニケーションに関して解決しているんじゃないかな、と思っています。まあ、コミュニケーションには十分ってことがないんで、まだまだ努力が必要ですけど。


− 活動の流れをお話し頂けないでしょうか。
基本的に、アーティストへの働きかけを必死にやっているわけではないですね。KOMPOSITION で作る場所の価値が上がれば、自然と集まってきてくれるだろうと思っていますから。そういう関係性でありたいんですよ。


だだっ広い大きな壁
− 今後の展望をお願いします。
基本的には今まで言われている「まち」というのはハードで、僕らはそこに新しい、物珍しいソフトを入れる役だと思っているんですよ。これまでに沢山の建物やら広場やら、ハードは作られてきているけれども、まだまだソフトは足りないんだと思っていて。多分、ソフトの提供があるとハードのあり方が変わると思うんですよ。例えばすごく良くデザインされたハードがあっても、それは汚くなったり汚れたりするわけだし、百年、二百年愛されるかなんて分からない。


見方を少し変えるとソフトが充実してくる時代においては、もしかしたらだだっ広い大きな壁の方が、装飾された壁より良い時代が来るのかもしれない。要は真っ白い壁というのが十余年間あったら、時代時代ごとに十回塗り替えていく。そっちの方が、作り込まれた壁が十余年間そのまま残っていくという事よりもよっぽど良い事なのかもしれない。


「まち」に手をかける
僕は「まち」に手をかけていくという事が重要だと思っています。「まち」って手をかけないじゃないですか。ハードって一回作ったらおしまいで。綺麗にする事はあるんだろうけれど、それ以外は取り壊しや改修の時くらいしか手をかけない。


そうじゃなくて、「まち」の人、遊びに来る人も含めて、僕の言い方では「まちにいる人」 もハードをどんどん作り替えていくということを繰り返した方が良いんだと思う。僕らはソフト屋さんだから細かいハードはいらなくて、大雑把なハードが沢山あった方がソフトを入れ易い。例えばリーガルウォールをやるとして、真四角でただ窓がポンポン、とあっただけの方がやり易く面白い。やりがいがある。


そのような目で「まち」を眺めると活かせるハードはいっぱいある。現実に空き地の問題だったり使われていない公園だったり壁だったり。正直、壁なんて看板は出しているかもしれないけれど基本的にはネズミ色の壁と白い壁がガタガタ並んでいるだけでしょう。単に風よけにしかなっていない。それが人の心を何かしら動かしたり楽しませるものにはなっていないと思う。


空もハード。全部ハード。
壁がキャンバスだと思えば絵が描けるし、写真を貼る台だと思えば写真も貼れるし、スクリーンだと思えば映像だってできるんだろうし、なんだってできる。地面だって同じでテニスコートだと思えばテニスができるし、サッカーコートだと思えばサッカーできるだろうし、そのように考えれば無限に考えられる。


感覚的には僕らは真っ白い折り紙を手にしたようなものですよ。何を作るかは折る人間によって決まる。そういったことを音楽も含めて全部やっていきたいな、と思っているんです。できない事もあるんだろうけれど。壁と地面でやれる事は全部追求していきたいですね。僕らが欲しがっているソフトは沢山あって、ソフトを作る才能はどんどん出てくる。それをぶつけるハードがないんだから、余っているハードを分けてくれ、と。仮に空中に映像を映し出せるのであれば、僕らにとっては空もハードになる。要は僕らは全部ハードだと見ている、と。

<つづく>